マタチッチ&チェコ・フィルによるブルックナーの交響曲第7番を聴いて

2023年2月27日

マタチッチ&チェコ・フィルによるブルックナーの交響曲第7番(1967年録音)を聴いてみました。

マタチッチならではの野太さを備えていつつも、清澄な演奏となっているように思えます。それだけに、第2楽章での敬虔な音楽世界が、とりわけ深く心に沁み込んでくる。
更に言えば、過度にグラマラスにならずに、適度に引き締まった演奏となっている。音楽がキリっとしている。音の粒がクッキリとしている箇所の多い演奏でもある。
そのうえで、マタチッチらしい悠然とした流れの感じられる音楽が鳴り響いています。泰然自若としていて、どっしりと構えた演奏が繰り広げられている。しかも、充分に逞しくもある。そういったことによって、荘重な音楽となっている。スケールが大きくもある。例えば、第1楽章の最後の部分での盛り上がりによって、シッカリとした気宇の大きさが示されている。また、第3楽章は、全体を通じて力感に溢れた雄渾な演奏が繰り広げられている。
そんなこんなのために、決して堅苦しくはないのですが、重層的であり、厳粛さのようなものも感じ取れる演奏となっています。
そして冒頭に戻るのですが、全体に渡って、澄み切った音楽が奏でられている。冴え冴えとしたブルックナー演奏。そんなふうに言えるように思えます。

ところで、このような印象を抱くのも、チェコ・フィルとの共演であるところが大きいのではないでしょうか。そう、ここでのチェコ・フィルは、とりわけ弦楽器群は、清潔感に満ちていて、かつ、艶やか。そして、ピュアな美しさを湛えている。
(もっとも、マタチッチの演奏には、チェコ・フィル以外のものであっても、少なからざる「清澄さ」が、もっと言えば「無垢な精神」のようなものが、備わっているように思えるのですが。)
どこのオーケストラを指揮しているのかということは、指揮者の演奏スタイルに大きな影響を与えると思えます。とりわけ、チェコ・フィルのような、強い個性を持っているオーケストラであればあるほど、その影響は大きい。そのようなことを、深く考えさせられる演奏であります。

いずれにしましても、ズシリとした手応えを感じさせてくれながらも、心が洗われるようでもある、素敵なブルックナー演奏だと思います。
更に言えば、マタチッチの演奏の奥深さを感じさせてくれる記録でもあると思います。