コリン・デイヴィス&バイエルン放送響によるメンデルスゾーンの≪宗教改革≫を聴いて
コリン・デイヴィス&バイエルン放送響によるメンデルスゾーンの≪宗教改革≫(1984年録音)を聴いてみました。
堅実にして、安定感の高い演奏であります。そして、ズシリとした手応えがある。
重心を低く採り、テンポも遅めで、どっしりとした構えの演奏が繰り広げられています。そのうえで、一音一音を噛みしめながら音楽が進められてゆく。
色調は暗め。と言いますか、漆黒の影のようなものが感じられます。それはちょうど、レンブラントの絵が持っているような色調、と言えば良いでしょうか。
その一方で、その先には胸に秘めた情熱が迸っている。そう、落ち着き払った演奏ぶりでありつつ、逞しい生命力を宿していて、力感に富んでいて、熱気を存分に帯びた音楽となっているのであります。
メンデルスゾーンならではの優美さはあまり感じられませんが、過度に重苦しいことはない。ここには、奥深い魅力に溢れている音楽がある。そして、誠に立派で、端麗な演奏となっている。純音楽的な美しさを湛えてもいる。
浮ついたところが微塵もないところから独特の魅力が湧きたってくるメンデルスゾーン演奏。そんなふうに言えるのではないでしょうか。