ミュンヒンガー&シュトゥットガルト室内管によるヘンデルの≪水上の音楽≫全曲を聴いて

ミュンヒンガー&シュトゥットガルト室内管によるヘンデルの≪水上の音楽≫全曲(1981年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

旺盛な録音活動を展開していたミュンヒンガー(1915-1990)にとって、意外にも、これは唯一の≪水上の音楽≫となっています。

ミュンヒンガーならではの、キッチリカッチリとした堅固な造りによる演奏が繰り広げられています。とても端正な音楽が奏で上げられている。風格豊かでもある。更には、輪郭線がクッキリとしていて、楷書風な演奏だとも言いたい。
そんなこんなが、いかにも「ドイツ風」であると言えましょう。
とは言うものの、1960年代辺りの壮年期のミュンヒンガーによる音楽づくりと比較すると、随分とロマンティックな雰囲気や、しなやかさを湛えたとなっている。過度に角ばっている、といった風でもない。その分、典雅な佇まいを感じ取ることのできる演奏となっています。
そのうえで、この作品が備えていて華やかさや愉悦感も、落ち着いた音楽づくりの先から滲み出してくる、といった演奏が繰り広げられている。揺るぎない安定感から染み渡ってくる華やぎ、とでも表現できそうなもの。
また、リズミカルな性格を帯びているナンバーでは、キビキビとした躍動性に不足はない。その一方で、ゆったりとしたテンポによるナンバーでは、慈しみや暖かみが感じられもする。後者においては、特に、第1組曲の第5曲目になる「エアー」において顕著。
そのような演奏ぶりによって、この曲集の音楽世界に安心して身を浸すことのできる演奏となっている。

晩年に差し掛かった時期のミュンヒンガーの美質がクッキリと刻まれた、聴き応え十分な、素敵な≪水上の音楽≫であります。