アッカルドによるパガニーニの≪24のカプリース≫を聴いて
アッカルドによるパガニーニの≪24のカプリース≫(1977年録音)を聴いてみました。
目が眩むほどに鮮やかな演奏が繰り広げられています。しかも、極めて真摯な演奏となっている。
まずもって、圧巻のテクニックだと言えましょう。この難曲を楽々と弾き切っています。しかも、テクニックの切れを、これ見よがしに見せつけるといった風情は全く感じらない。もっと言えば、切り口が鋭く尖っているというふうには感じられず、音楽全体にふくよかさが備わっている。贅肉を削ぎ落としたような演奏、或いは、ストイックな演奏というよりも、豊饒な音楽が鳴り響いているのであります。そのうえで、頗る鮮烈な演奏となっている。
その一方で、パガニーニならではの明朗な音楽になっているかと言えば、そうとは言い切れない。実に峻厳な音楽が提示されているのであります。それはまるで、バッハの無伴奏作品であるかのよう。
そう、ここでのアッカルドは、ただ単に朗らかに、或いは華やかに音楽を歌い上げるといったことをしていないと言いたい。単なる感覚的な音楽として、この作品を提示している訳でもなさそう。ひたすらに作品の奥深くへと踏み込んでゆこうという姿勢を貫いていると思えてなりません。しかも、頗るアグレッシブな形で。そのために、至る所で音圧の大きな音が奏でられてゆく。その様は、まさに「鬼気迫る」ものが有ると言えましょう。
そのうえで、アッカルドらしい艶やかな音は、ここでも健在。そのために、峻厳であるとともに、流麗な音楽となっている。と言いつつ、感情に流されるようなことは皆無なのですが。
アクロバティックな面白さのみに拘泥していない演奏。そのようなこともあり、ちょっと奇妙な言い方にはなりますが、「芸術的な価値」の高いパガニーニ演奏だと言えるように思います。
聴き応え十分で、なんとも見事な、そして、素敵な演奏であります。