カイルベルト&ハンブルク国立フィルによるヒンデミットの≪ウェーバーの主題による交響的変容≫を聴いて

カイルベルト&ハンブルク国立フィルによるヒンデミットの≪ウェーバーの主題による交響的変容≫(1955年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

カイルベルトによる演奏の特徴は、武骨な演奏ぶりにあると考えています。質実剛健な音楽づくりを基調としながら、骨太で、古雅で朴訥としていて、昔気質な性質を持っていると言いたくなるような演奏を聞かせることが多い。
そこへいきますと、ここでの演奏では、そのような性格は薄いように思えます。速めのテンポを採りながら、スタイリッシュと呼べそうな演奏が繰り広げられている。率直なエネルギーの放出、といったようなものが窺えもする。そう、総じて、輝かしさがあって、覇気の漲っている演奏が展開されているのであります。ドラマティックでもある。
とは言いましても、決して野放図であったり、楽天的であったり開放的であったり、という演奏になっている訳ではありません。逞しい生命力を湛えながら、集中度の高い演奏が展開されている。そして、真摯な表情をした音楽が鳴り響いている。十分にシリアスな音楽となってもいる。この辺りは、ヒンデミットによる音楽には誠に相応しい。

カイルベルトによる演奏を俯瞰するに当たって、とても興味深い演奏だと言えるのではないでしょうか。しかも、この作品の魅力が、ストレートに伝わる演奏となってもいる。
なかなかに貴重な、そして、魅力的な光を放っている演奏だと思えます。