カザルス&マールボロ音楽祭管によるベートーヴェンの交響曲第7番を聴いて
カザルス&マールボロ音楽祭管によるベートーヴェンの交響曲第7番(1969年ライヴ)を聴いてみました。
カザルスという音楽家の、意志の強さが滲み出ている演奏。そんなふうに言えようかと思います。
がっしりとした構成による、骨太な演奏となっている。生命力に満ち溢れた逞しさが前面に押し出されている。武骨であると言っても良さそう。そう、頗る強靭であり、力感に富んでいて、なおかつ、峻厳な音楽が鳴り響いているのであります。そして、この作品に相応しい、律動感と輝かしさとが存分に備わってもいる。
そのような演奏ぶりによって、全体を通じて、なんとも巨大な音楽が奏で上げられてゆく。
その一方で、優しさがこぼれてきている。慈愛に満ちてもいる。そして、純真で、篤実で、暖かみに溢れた演奏となっている。厳しさの中に、微笑みが感じられるような音楽となっていると言えそう。慈愛に満ちてもいる。
これらはまさに、カザルスの人間性の反映に他ならないと言えるのではないでしょうか。
驚くべきは、音楽の仕上がりが、かなり滑らかであるということ。なるほど、大別するとゴツゴツとした肌触りの演奏ということになるのでしょうが、思いのほか丁寧な磨き上げがなされています。そう、決して雑な演奏となっている訳ではないのです。そのために、感覚的な美しさも十分に湛えている音楽が奏で上げられている。
最終楽章の昂揚感も、見事であるとしか言いようがありません。流麗と言っても良いほどの磨き上げが為されている。そのうえで、壮麗で、しかも力感に富んだ音楽づくりによって、壮大なるクライマックスが築かれてゆく。
聴いていて、魂を揺さぶられるような演奏。懐の深い演奏だとも言えましょう。そのうえで、仕上げの美しさにも耳を奪われ、豊饒な音楽が鳴り響くこととなってもいる。
いやはや、実に素晴らしい、偉大な演奏であります。