ベルリン弦楽四重奏団によるベートーヴェンの≪ラズモフスキー≫第3番を聴いて

カール・ズスケが率いていたベルリン弦楽四重奏団によるベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集より、≪ラズモフスキー≫第3番(1967,68年録音)を聴いてみました。
この音盤に対して、強い愛着を抱いておりまして、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集としましては文句なしのマイベスト盤になっています。

気宇が大きく豪壮なこの作品を端正に奏で上げてゆく、ここでの演奏。しかも、なんとも薫り高くて、雰囲気豊かな演奏となっている。鋭利で刺激的な演奏とは対極にある、雅趣に富んだ演奏が繰り広げられています。
作品を慈しみながら、丹念に、そして誠実に音楽を作り上げていって、そこに「人肌の暖かさ」が加えられたような演奏。そんなふうにも言えるのではないでしょうか。
更には、凝縮度が高くもある。この点は、この作品を演奏するに当たっては、とても重要なことだと思えてならない。
そのうえで、4つの楽器が織りなす響きは、これ以上ないほどに調和が取れていて、惚れ惚れするほどに美しい。そして、音楽が極めて自然に、かつ、しなやかに息づいている。あらゆる場面で見せてくれている表情は、チャーミングこの上ない。
しかも、この作品に不可欠な力強さや逞しさに不足はない。気品のある輝きを発しているとも言いたい。推進力も充分。

この作品の魅力を堪能することができる演奏。なおかつ、弦楽四重奏曲に接する歓びを、もっと言えば、音楽を聴く歓びを、十二分に味わうことのできる、素敵な素敵な演奏。そんなふうに言いたい。