チョン・ミョンフン&バスティーユ・オペラ管によるR=コルサコフの≪シェエラザード≫を聴いて

チョン・ミョンフン&バスティーユ・オペラ管によるR=コルサコフの≪シェエラザード≫(1992年録音)を聴いてみました。

小気味良くて、躍動感に満ちていて、色彩感に溢れていて、エレガントで、そして、適度に壮麗。そのような演奏だと言えましょう。
この作品の多くの演奏から感じられる「絢爛豪華」で「豊麗」で「妖艶」な音楽という印象は薄い。それよりももっと、キリッと引き締まった音楽になっている。清楚だとも言いたくなる。そして、抒情的な美しさを湛えたものとなっている。
と言いつつも、充分に躍動的であり、エネルギッシュであり、音楽が至る所でうねっています。しなやかに息づいている。一つ一つの音の粒が揃っていて、そのうえで音楽が弾け飛んでもいる。最後に触れた部分は、木管楽器群の音が、しばしばコロコロと転がっていくような趣きを持っていることに依るのでしょう。そして、木管楽器群の響きがカラフルで、光沢が感じられ、かつ、エレガント。この辺りは、いかにもフランスのオケらしいところだと言えるのではないでしょうか。

そのような音楽づくりをベースにしながら、この作品が持っている壮麗さも、決してひけらかすことなく、過不足なく描き出されてゆく。こけおどしな音楽になっている訳ではないのですが、この作品が持っているドラマ性を充分に表出しており、語り口の巧さが感じられもする。

独特な魅力を持っている、素敵な演奏であります。