テンシュテット&ロンドン・フィルによるワーグナーの管弦楽曲集(LPOレーベル・1992年ロンドンでのライヴ)を聴いて

テンシュテット&ロンドン・フィルによるワーグナーの管弦楽曲集(1992年ライヴ)を聴いてみました。
1992年8月20日、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールにおけるライヴ録音と記されていますので、BBCプロムスの中での演奏会だったのでしょうか。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

収蔵されているのは、下記の6曲。
≪ニュルンベルクのマイスタージンガー≫第1幕への前奏曲
≪リエンツィ≫序曲
≪神々の黄昏≫夜明けとジークフリートのラインへの旅立ち
≪神々の黄昏≫ジークフリートの葬送行進曲
≪ワルキューレ≫ワルキューレの騎行
≪タンホイザー≫序曲とヴェヌスベルクの音楽

1988年のロンドン・フィルとの来日公演でもワーグナーの管弦楽曲集がプログラミングされ、そこでの演奏をYouTubeで聴くことができます。その演奏はと言うと、テンシュテットならではの熱い血潮の燃え滾る演奏となっていました。
そこへゆくと、この1992年のロンドン・ライヴは、テンシュテットの様々な側面を窺うことのできる演奏になっていると言えそう。それは、いかにもライヴらしいところでもあるのですが。
基本的には、端正な音楽づくりを主体にしたものだと言えるのではないでしょうか。やや遅めのテンポを基調にして、深みのある響きを伴いながら、ゆとりを持って、音楽をタップリと鳴り響かせてゆく。そして、聴く者を煽り立てるような音楽を掻き鳴らすようなことはしない。
更に言えば、音楽の流れが滑らかで、流麗でもある。このことは特に、冒頭に収められている≪マイスタージンガー≫において顕著であります。
その一方で、「ジークフリートの葬送行進曲」では、壮麗にして雄大な音楽が鳴り響いている。気宇が大きく、裾野の広い音楽世界が広がってゆく、といった趣きが感じられる。それは、ズシリと胸に響く音楽となっている。
ところが、「ワルキューレの騎行」では、運動性の高さが表わされていて、音楽が渦巻き始める。そこからは、ライヴならではの感興の昂ぶりといったものが感じられる。
そのような「ワルキューレの騎行」を経て演奏される≪タンホイザー≫は、この音盤に収録されている演奏における白眉なのではないでしょうか。
(当盤での収録の順番が当日の演奏順となっているのかは、明らかではないのですが。)
序曲の前半部分では、深みのある響きが最大限に生かされ、タップリとした音楽が奏で上げられている。ところが、中間部に入ると音楽は俄然躍動し始める。そして、ヴェヌスベルクの音楽に突入すると、音楽は沸騰してゆき、うねりにうねりながら陶酔感の大きな音楽鳴り響くこととなる。それはまさに、「情熱の人」テンシュテットの、面目躍如たる音楽だと言いたい。

テンシュテットという指揮者について考えるにあたって、誠に興味深い1枚。そんなふうに言えるように思えます。