アンダ&クーベリック&ベルリン・フィルによるシューマンのピアノ協奏曲を聴いて

アンダ&クーベリック&ベルリン・フィルによるシューマンのピアノ協奏曲(1963年録音)を聴いてみました。

ハンガリー生まれのピアニストでありますアンダ(1921-1976)と言えば、まずもって、フリッチャイとのバルトークのピアノ協奏曲が思い出され、それに次いでは、ザルツブルク・モーツァルテウム管を弾き振りして制作したモーツァルトのピアノ協奏曲全集が思い出される、といったところなのではないでしょうか。あとは、カラヤンと共演したブラームスのピアノ協奏曲第2番を思い出す方もいらっしゃるかもしれません。
そして、それら以外の音盤が顧みられる機会は、あまりないように思われる。

そのようなアンダが、クーベリックと共演して録音した、ここでのシューマン。それは、情感豊かで、抒情的で、哀愁が漂っていて、しかも、充分なる逞しさや熱気や壮気の感じられる演奏となっています。であるが故に、端正でいて、細やかなニュアンスの施された音楽が鳴り響くこととなっている。淡い色彩をしているようでいて、濃密でもある。そして、凛としたロマンティシズムの漂う演奏となっている。
更には、音の粒がクッキリとしている。なおかつ、響きは清潔感に満ちている。
音楽は大きく伸縮しながら進んでゆくのですが、そのことが、とてもナイーヴな心情を吐露することになっている。この点につきましては、この作品を演奏するに当たって、大半のピアニストが務めていることだと言えましょうが、ここでのアンダは、他の多くの演奏と比して、より一層強く感じられます。とは言うものの、その表情付けには恣意的なものは一切見受けられない。それは、音楽を感じ切って演奏しているからに他ならないと言いたい。
そのうえで、情熱的な性格付けにも不足はない。シューマンならではの「狂気」といったものは、過剰な形で描き上げられている訳ではないものの、必要十分に音楽がうねっている。そして、十分なまでに生き生きとしている。
そのようなアンダをバックアップしているクーベリックは、毅然としていて、かつ、ロマンティックな演奏を繰り広げてくれています。奏でられてゆく音は、充実感や安定感に満ちている。これはもう、万全なサポートぶりだと言えましょう。
いずれにしましても、アンダもクーベリックも、大言壮語をする訳ではなく、極めて真摯な演奏ぶりを示してくれています。

アンダとクーベリックの美質がクッキリと刻まれていて、かつ、作品の魅力をジックリと味わうことのできる、素敵な素敵な演奏であります。