クリップス&ロンドン響によるメンデルスゾーンの≪イタリア≫を聴いて

クリップス&ロンドン響によるメンデルスゾーンの≪イタリア≫(1953年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

優美で典雅な演奏が繰り広げられています。馥郁とした薫りが立ち込めるが如き演奏だとも言いたい。それはまさに、ウィーンを中心に活動していた指揮者ならではのものだと言えましょう。そんな、情緒連綿たる演奏となっている。
と言いつつも、情緒に流されているような演奏になっている訳ではありません。とても克明で、クッキリとした佇まいをしたものとなっている。決して過剰にはしゃぎ回っているような演奏ではないものの、十分に溌溂としていて、この曲に相応しい明朗な音楽が鳴り響いてもいる。
テンポは、速からず遅からず。息遣いの極めて自然な演奏が繰り広げられている。基本的には、堅固な演奏ぶりが示されていつつも、伸びやさに不足はない。そんな、どっしりとした構えをした音楽づくりの中から、活力に溢れていて、かつ、格調の高い音楽が鳴り響くこととなっている。暖かみに溢れてもいる。
そんなこんなに、クリップスの懐の深さが見て取れます。

シュワルツコップが、「一番お世話になった指揮者」と感謝を表していたクリップス。そのようなクリップスの奥義を堪能することのできる、素敵な演奏。そんなふうに言いたくなります。