デュトワ&モントリオール響によるビゼーの≪カルメン≫組曲第1,2番を聴いて
デュトワ&モントリオール響によるビゼーの≪カルメン≫組曲第1,2番(1986年録音)を聴いてみました。
11のナンバーからなる組曲として編まれており、演奏時間は35分少々となっています。
デュトワらしい、生気に溢れていて、なおかつ、瀟洒な雰囲気の漂う演奏が展開されています。生彩感に富んでもいる。
しっとりとしていながらも、音楽が存分に弾んでいる。原色系のスペインの彩りに覆われている演奏だという訳ではないのですが、色彩的な音楽が奏で上げられています。そのうえで、大見得を切ったり、過剰に煽情的になったり、といったようなことは一切ないものの(例えば、「ジプシーの踊り」では節度を持って煽っている)、オペラ音楽から抜粋された組曲に相応しい劇性を備えている。目鼻立ちがクッキリとしていて、明朗な音楽となってもいる。
更には、急速なテンポによるナンバーでは、キビキビとした演奏が展開されています。頗る小気味良くもある。そのことによって、コントラストの明瞭な演奏となっている。
しかも、「セギディーリャ」において顕著なように、歌心も充分。全編を通じて、伸びやかにして、しなやかな音楽が鳴り響いています。
そんなこんなのうえで、エレガントな美しさをまとった演奏となっている。聴いていてウットリとしてくることが、しばしば。
理性的でありつつも、活力に溢れていて、なおかつ、頗る美麗な演奏。そこからは、デュトワの音楽センスの豊かさや、音楽を纏め上げてゆく手腕の高さを、つぶさに感じ取ることができる。そのうえで、音楽に接する歓びをタップリと味わうことのできる演奏となっている。
デュトワならではの魅力に包まれている、なんとも素敵な≪カルメン≫組曲であります。