鈴木雅明さん&バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)によるバッハの≪管弦楽組曲≫全4曲を聴いて
鈴木雅明さん&バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)によるバッハの≪管弦楽組曲≫全4曲(2003年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
生命力に溢れていて、晴れやかで、伸びやかで、輝かしい演奏が繰り広げられています。しかも、頗る清新。そう、音楽が清々しい空気に包まれている。
小細工は一切なし。取り澄ましたような表情も、全く見えない。作品に込められている「命」や「息吹」を、ストレートに描き上げてゆこう。そのような気持ちによってのみ演奏されている。そんなふうに思えます。
そのようなこともあって、息遣いが極めて自然な演奏となっている。流れが滑らかでもある。更には、音楽全体が心地よく弾けていて、溌剌としていて、嬉々とした表情を湛えている。
しかも、仕上げが誠に丁寧。キビキビとした音楽運びを基調としながら、弾き飛ばすようなところは微塵もなく、丹念に演奏されてゆく。アンサンブルも精密。それでいて、機械的に感じられることはない。人肌の温もりを帯びているのであります。更に言えば、堅苦しさが感じられるようなこともない。むしろ、闊達にして、愉悦感に満ちた音楽が奏で上げられている。適度にふくよかでもある。
また、時に、独創的な付点のリズムを採り入れることによって、音楽に「揺らぎ」を与えているところが、なんとも興味深い。
そんなこんなのうえで、音楽の足取りやアンサンブルやがダブつくようなことは皆無。そう、快活で、スッキリとした佇まいをしているのであります。そのうえで、充分にホットで、輝かしさを秘めている。とりわけ、第3番の序曲でのスピード感に満ちた演奏には、目が眩みそうになる。それでもやはり、総体的に見ると、爽快さや、溌溂とした生命力、といったものをベースにした演奏だと言えるように思えます。
このようなことが、確信を持った演奏ぶりによって繰り広げられてゆく。そこには、鈴木雅明さんとBCJのメンバーの、バッハへの深い敬愛がベースになっているのだということも、疑いようがないと言いたい。もっと言えば、アットホームな雰囲気が漂ってもいる。
誠実であり、かつ、堅固な音楽づくりでありつつも、暖かみや、柔らかさや、ふくよかさや、清々しさを備えた演奏。優しい眼差しをしていて、人懐っこい表情をしたバッハが、この演奏からは見えてきます。
バッハの音楽に接する歓びをタップリと味わうことのできる、なんとも見事な、そして、頗る素敵な演奏。そんなふうに言えるのではないでしょうか。