ライナー&シカゴ響によるマーラーの≪大地の歌≫を聴いて

ライナー&シカゴ響によるマーラーの≪大地の歌≫(1959年録音)を聴いてみました。独唱者はルイス(テノール)とフォレスター(コントラアルト)。

ライナーらしいダイナミックな演奏であります。そのうえで、毅然としていて、緻密な演奏が繰り広げられている。音の立ち上がりがクリアで、旋律がクッキリと奏で上げられてゆく。
第1楽章などは、音の動きそのものが頗るクリアで、なおかつ、力強く推し進められてゆく。その演奏ぶりは、誠に痛快。似たようなことが、第4楽章の中間部にも当てはまりましょう。第5楽章もまた、同様でありますが、こちらでは朗らかさが備わってもいます。
その一方で、マーラーがこの曲に籠めていった諦観も、湿っぽくならない範囲で描かれている。さほど寒々としていなくて、伸びやかでありつつも、超然としている。その描かれ方は、純音楽的であるとも言えましょう。このような特徴は、第2.3楽章や第4楽章の前後半部、そしてとりわけ、終楽章の「告別」において顕著。
「告別」では、過度に重々しくはないものの、とても真摯な音楽が鳴り響いている。中間部で示されている、逞しくて彫琢が深くて、しかも、ある種の壮絶さが感じられるのは、ライナーならではのもの。と言いつつも、ここでも、過剰な演出が加えられている訳ではなく、頗る純音楽的で、凛としている。
ルイス(1914-1990)の独唱は、ハリのある美声に支えられた輝かしさを持っている。歌いぶりが真っすぐでもある。
フォレスター(1930-2010)は、深々としていつつ、暖かみのある歌を披露してくれている。情感が豊かでもある。

濃厚なロマンティシズムが漂ったり、情念的であったり、といったマーラー演奏にはなっていませんが、その分、作品の輪郭を明瞭に捉えることのできる演奏だと言いたい。そして何よりも、ずしりとした聴き応えがある。
ユニークな魅力を湛えた≪大地の歌≫であります。