インバル&フランクフルト放送響によるブルックナーの交響曲第8番を聴いて

インバル&フランクフルト放送響によるブルックナーの交響曲第8番(1982年録音)を聴いてみました。

インバル&フランクフルト放送響のコンビは、ブルックナーの交響曲全集を完成させています。その全集は、初稿を用いたものだったことに特徴があり、大きな話題を呼んだものでした。ここでのブルックナーの一連の録音によって、インバルの存在は一気にクローズアップされたと言えましょう。
この第8番は、その全集を制作するに当たり、最初に録音されたものになります。1887年に完成した初稿が使われている。

さて、ここでの演奏はと言いますと、清々しくて、澄み切ったものとなっています。清涼感の漂うブルックナー演奏であるとも言えそう。そこに、初稿を使用していることもあって、決定稿とも言えそうな1890年・第2稿との相違が随所に見られ、聴きなれない楽想がひょいと現れたり、第2稿とのオーケストレーションの違いや音楽の流れの違いが生じたり、といった楽しみが加わることとなる。
(現行版として平常的に使用されるものと初稿との違いは、他のブルックナーの交響曲と比較しても、かなり大きい方だと言えそう。例えば、第2楽章のトリオ部などは、第2稿とは全く異なる旋律を主体にしながら書き上げられている。)
そのうえで、整理整頓の行き届いている演奏だとも言いたい。磨き上げが丹念で、美麗で滑らかな音楽が鳴り響くこととなっている。そのこともあり、すっきりとしていて、とても聴きやすく、心地よくもある。
そこに加えて、持って回ったようなまどろっこしさや、大上段に構えたような素振りの見当たらない演奏となっています。このことは特に、第3楽章において強く当てはまると言いたい。そんな、なんとも屈託のないブルックナー演奏が展開されている。

なるほど、淡めの音楽づくりが為されているブルックナー演奏だとも言えましょう。とは言いながらも、力感に不足しているようなところはない。そして、目鼻立ちがクッキリとしている分、作品の実像がよく掴める演奏となっている。構築力に優れている演奏だとも言えそう。
初稿を知るという文献的な価値を備えているとともに、演奏自体もユニークな魅力を備えたブルックナー演奏が刻まれている、素敵な1枚であります。