トルトゥリエ&ハイドシェクによるフォーレのチェロソナタ第1,2番を聴いて
トルトゥリエ&ハイドシェクによるフォーレのチェロソナタ第1,2番(1974年録音)を聴いてみました。
この両曲は、フォーレ(1845-1924)が72歳と76歳の時に書き上げられている、晩年の作品ということになります。2曲ともに、演奏時間は17分から18分ほど。
ここでは、フランスが生んだ2人の名手によって演奏されていますが、理想的な演奏家と作品の組合せだと言えるのではないでしょうか。
その演奏内容はと言いますと。
かなり厳しい演奏となっています。そして、音楽が存分にうねっている。
そう、演奏から厳粛な雰囲気が漂っている。一点一画も揺るがせにしないような厳格さを持っている。そのうえで、骨組みがシッカリとしていて、彫りが深い。単に情緒に溺れるような音楽になっていないのであります。
フォーレの音楽は、詩情が溢れているとともに、高潔でもあると思えます。トルトゥリエとハイドシェクが奏でるここでの演奏は、フォーレの高潔な部分にスポットが当てられていると言えそう。その性格は、とりわけトルトゥリエに強いように感じられる。しかも、トルトゥリエの演奏ぶりからは激情的な雰囲気が滲み出ていて、骨格のシッカリとした音楽となっている。
そのような中から漂ってくる馥郁とした薫りがまた、実に素晴らしい。こちらについては、ハイドシェクに依るところが大きいのではないでしょうか。
厳粛で高潔であるとともに、その先から詩情が漂ってくる演奏。フォーレの室内楽作品に特有の「うねり」を伴ってもいる。昂揚感が高くてドラマティックでもある。しかも、頗るエレガントで、格調が高い。そんなこんなによって、奥行きの深さの感じられる、充実感いっぱいな演奏が展開されています。
作品の魅力と、演奏者の魅力の双方を存分に味わうことのできる、惚れ惚れするほどに素敵な演奏であります。