ミルシテイン&スタインバーグ&ピッツバーグ響によるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を聴いて

ミルシテイン&スタインバーグ&ピッツバーグ響によるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(1955年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ミルシテインならではの、凛とした美しさを湛えた音楽が鳴り響いています。とても高潔な演奏となってもいる。
音楽が弛緩するようなことは微塵もなく、ピンと張り詰めた演奏が展開されています。とは言うものの、過度に厳粛な雰囲気を帯びることはない。それよりももっと、伸びやかで、流麗な演奏となっている。とろけるような甘美さを備えてもいる。しかもそれは、単に感覚的なものではなく、精神を痺れさすような甘さだと言いたい。それでいて、毅然としていて、キリッとした演奏が繰り広げられている。
そのうえで、この作品に相応しい気高さを備えた演奏となっています。ベートーヴェンの作品としては、さほど闘争的ではなく、典雅な世界の広がる、この協奏曲。そういった高貴さが、巧まざるかたちで浮かび上がってくる。その様にはまさに、玲瓏たる音楽が響き渡っていると言いたくなる。
しかも、最後の最後、最終楽章の終結部において、急激に緊密度を上げながら、厳粛にして激烈な音楽づくりが示され、音楽を昂らせながら閉じている。そういった演奏上の設計も、見事であります。
そのようなミルシテインをバックアップしているスタインバーグは、克明にして丹念な音楽づくりを施している。そのことによって、とても見通しの良い音楽が鳴り響くこととなっています。そういった演奏ぶりが、ミルシテインの端正な音楽づくりを引き立ててくれていると言えましょう。

ミルシテインの魅力と、この作品の魅力の双方を存分に味わうことのできる、なんとも素敵な演奏であります。